15分で読めます! 失敗しない家づくりのヒント
「工務店の選び方を教えてください!」という声が多いのと同時に「こんなはずじゃなかった・・」という相談者が多いのが現実です。
「家を建てたい」と思ったら、まずはどこに頼もうか・・の前に、知っておいて頂きたいことがあります。
皆さん、依頼先候補のハウスメーカー・工務店といった会社のHPや口コミなどの情報収集をしていくわけですが、多くの皆さんが大切なことを知らない、または忘れてしまうことをお伝えします。
皆さんが建てたい(住みたい)家は、どんな家ですか?
よく耳にするのは「いい家」「性能がいい家」「あったかい家」「地震に強い家」「家族が集う家」など様々ですが、実はあまり理解しないで家づくりが進んでいってしまうケースが多いです。
「カレーが食べたい」って思ったことありますよね?
突然ですみません(笑)
家づくりの最初の最初、「いい家」って何だろう?をカレーにたとえて話してみます。
「カレーが食べたい!」って思って、お店を探すのと
「おいしいカレーが食べたい!!」の場合だと、探すべき店って違いますよね?
単なるカレーであれば、それこそコンビニでもレトルトでもなんでもいいですが
おいしいとなると話は違ってきます。
でも・・違うカレー屋さんに行って「おいしいカレーが食べたい!」って頼んでも、当たり前ですが、店によって違うカレーが出てきますよね。
だってそのカレー屋は自分の作るカレーがおいしいと思っているわけだし、「おいしい」に具体性がありませんから、自分の作るカレーを「はい、どうぞ!」って提供するだけです。
そのカレーは本当に「あなたが食べたかったおいしいカレー」なんでしょうか・・・?
よく耳にしますが「いい家を建てたい」という要望ですが、そもそもいい家って何でしょうね?
いい(良い)とは、比較する際に使う単語だと思いますので
「●●な家と比べていい家」ということなんでしょうけど、比べる●●な家はどんなものでしょうか?
今住んでいるマンション?
子供の時に住んでいた実家?
雑誌に載っているおしゃれな家?
具体的なイメージ出来てなく漠然といい家が欲しい!という方も多いと思います。
カレーが食べたい=家を建てたい
おいしいカレーが食べたい=いい家を建てたい
ちょっと似ていますよね。
「おいしいカレー」ってどんなカレーですか?
カレー専門店は世の中にたくさんあると思いますが、店毎に別々のカレーを作っています。
その中で自分が食べたいカレーにたどり着くには、もう少し具体的な情報が必要です。
まずは使っている材料ですよね。
カレー屋さん「肉は、牛肉?それとも豚肉?」
あなた「いや自分は鶏肉が食べたい!」
カレー屋さん「野菜は、ニンジンと玉ねぎ、ジャガイモ。」
あなた「あとはほうれん草を食べたい!」
カレー屋さん「トッピングはチーズと半熟卵選べますけど?」
あなた「卵がいいけど、半熟じゃなくて固めってできます??」
まず、こういうやり取り(情報)がないと「自分が思うおいしいカレー」を食べられません。
ハウスメーカーも工務店も一緒で、まずはその会社の「材料選びがどうなっているか?」を知ること、理解することがとても重要です。
基礎は「鉄筋コンクリートでシングルべた基礎」
構造は「一部、集成材を用いた在来軸組工法」
断熱材は「屋根は吹付断熱材、壁は充填方式のロックウール」
防水は「ベランダはFRP防水、壁の2次防水は透湿防水シート」
逆を言えば、住宅会社は自分たちの家づくりをするには、最初に材料を選ばなくてはいけないということですね。
カレーに入れる材料が決まれば、仕入れをどこからするのか・・は重要です。
オーガニックなのか、外国産なのか?店によってはこだわりますし、食べるあなたも気になる人は気になります。
建築材料も同じことが言えます。木材の流通ルート、防水紙のメーカーと購入依頼する商社、鉄筋の認定工場・・
ここまできちんとした考えをもって材料選定している工務店は少ないと言えます。(大手のハウスメーカーはある程度きちんとしていますが)
あなたの食べたいカレーが「別に、ニンジンなら何でもいいよ?」であればいいですが、そうでなければしっかり確認をしておく必要があります。プロだから仕入れや目利きに間違いない!と思っていると、痛い目にあいますよ。
さて、同じ材料を使うのであれば、おいしいカレーになるのでしょうか?
違いますよね。
次に決めなくて行けないのは分量です。
ニンジン●本、鶏肉50g・・ということですが、
材料と分量を決定する作業は、家づくりでいえば「仕様決め」です。
断熱材はロックウールで外壁には100mmを採用しよう。
FRPはガラスマットを2重にした2Pに。
耐力壁の面材はノボパンがいいんじゃないかな。
このような仕様決めを経て、住宅会社は「性能値」や「保証期間」を計算、約束していきます。例えば・・
断熱材はロックウールで外壁には100mmを採用しよう。
⇒UA値は「0.5」です
FRPはガラスマットを2重にした2Pに。
⇒防水の保証は10年です
耐力壁の面材はノボパンがいいんじゃないかな。
⇒耐震等級3が標準です
なぜ、売り手(住宅会社)は、性能を数値化や保証可視化するのでしょうか?
大きな理由の一つは「比較しやすい」からです。
少し話をさかのぼると、いい家って比較する家がないと「いい」ってわからないよね?
ということにつながりますね。住宅会社を選定していく際に、気にしてほしいのは「何と比較していい(良い)家」と謳っているかです。
これでおいしいカレーは食べられそうですか?
カレーの肉は鶏肉を食べたい!って、思っていたけど
カレー屋さんからは、鳥肉もいいけど豚肉が一番お勧めだよ(^^♪って、言われたらどうしますか?
いやいや・・今日は鶏肉の気分!なのか、豚肉っておいしいのか・・
どんな豚肉使っているの?鳥肉との違いは?って、聞いてみて決めようかな。
住宅会社を選ぶときに大切なことは、このやり取りなんです。
例えば
断熱材は「屋根は吹付断熱材、壁は充填方式のロックウール100mm厚で壁のUA値0.5」
と書きましたが、これ本当に理解できていないで家を建てる人が多いんです。
「UA値の計算方法を知ってほしい」ということではなく
採用した仕様でUA値0.5が自分の望むものかどうか?を判断(真に納得)できていないということです。
性能値の計算は仕様で決まりますから、材料を変更したり、厚みを増減させれば(計算)値は上下するのはイメージ湧くと思います。
その住宅会社はなぜ「ロックウールで外壁には100mm」にしたのでしょうか?
他の断熱材と比較して、最終的にロックウールにしたの?
厚みは80mm・90mm・100mm・110mmと検討して、100mmに?
このような仕様決めの経緯を説明してくれない会社は、家づくりに「信念」がありません。信念がなく単に「UA値0.5」を達成したい・・ということであれば、その工務店が見ている先は競合先の比較工務店であって、あなたの新居ではない可能性が高いです。
つまり「単に、家を売りたい!」ということですよね。
よく「素人にはむずかしい」と言われますが、専門的なこと以前に
・断熱材はなぜロックウールにしたのですか?
・屋根と壁で種類が違うのはなぜですか?
・ほかの断熱材でお勧めはないですか?
・じゃあ、ロックウールのメリットデメリットは?
・何のためにUA値という基準があるのですか?
・UA値の最適数値は?
・UA値って0(ゼロ)にはできないの?
など、頭に浮かぶ疑問をそのままぶつけてみて納得いく説明をきちんとしてくれる工務店は、いい工務店の確率がぐっと上がります。
カレーに入る材料が「どこで作られ」「誰が作って」「農薬の有無」「収穫時期」など全く気にならないのであれば、もちろんいいのですが・・
ここまでの話でだいぶ「おいしいカレー」に近づいたと思いますか?
いえいえ・・材料や分量が決まっていればカレーっておいしいのでしょうか?
言い換えると仕様にこだわりぬいて、数値化された性能が高い家は、本当にいい家なのでしょうか?
素人だし、時間もないからお任せしたい・・という方はハウスメーカーが向いていると断言できます。
一方で、こだわりのある家を建てたい(自分たちにとって最良のいい家)という方は、それ相応に時間をかけて勉強しなくてはいけません。最も、我々のようなプロに相談できれば大幅な時間短縮は出来ますが・・
失礼な言い方ですが「楽して情報を取得したい」というのは都合がよく、真の情報は得られません。例えば「比較サイト」などを使って情報を集めるのは、やめたほうがいいとは言いませんが、あくまでも参考程度がいいでしょう。当然、それらの情報のみで住宅会社を選ぶようなことはNGです。
食べログなど情報収集に便利なアプリはありますが、その店のカレーを本当に食べたかどうかもわからない情報がいくつもありますから、話半分にしておかないと、期待外れだったりすることもしばしばです。
現在、書籍やブログ、YouTube・・SNSを中心に住宅に関する情報を入手する方法は多岐にわたります。あるブログではこう言っているが、別の人はこうだ・・何が正しい情報なの?と思うケースもありますね。
私も情報発信側の人間の一人ですが、多くの情報発信者は「仕様決め(≒性能数値)」で評価をしているケースが多いと思います。
・断熱材は●●、UA値▲▲だから断熱性能に優れている!
・熱交換機械式の換気方式なので、省エネでコスパがいい!
・耐震等級3が標準だから問題ない!
という感じでしょうか・・食べたことのないカレーは、本当は評価できないんです。
ですから、そういった評判や評価はあくまでも鵜吞みにせず、参考程度にとどめておくのがいいでしょう。
それよりももっと大切なことがあります。そうですね、レシピです。
つまり「作り方」です。
作り方を間違えてしまうと、せっかく厳選した材料も水の泡です。
「とり肉、硬っ!!」みたいな・・
家づくりでもレシピが重要なのですが、簡単に言えば
「設計図書」と「施工マニュアル」がその役目を担っています。
つまり、設計者が、各種法令遵守の上、建築計画を立案し設計図書を作成する。現場監督が施工ルールやマニュアルに精通した上で作業をさせる。こうした当たり前のことをやったうえで、期待通りの性能を発揮できる住宅が完成していくわけですね。
でも、住宅業界では「当たり前」じゃないんです。
「うちはレシピなんかないよ?」
「大丈夫、味見しているから」
「大体でいいでしょ、辛さなんか細かくわかんないよ」
「ジャガイモくずれちゃったけど・・まぁいいか」
みたいなカレー屋さん、嫌ですよね?(笑)
「部屋数は希望通りにとれているから、このプランでいいか」
「開放的なプランがいいらしいから、玄関広めでリビングにも吹き抜けとか提案しとけ」
「耐震等級3相当って言っておけばいいんじゃない?経験上、倒れないよ」
「最近は雨漏れのクレーム少ないし、防水はこれでいいか。雨漏れ保険にも入っているし」
「断熱材は入っていればいいんだよ、結構値段する材料だから、多分あったかいよ」
「昔と比べれば、結構見栄え良く造ってあるよね」
こんな話が消費者に分からないところでされているかもしれない業界なんです。
材料も厳選したし、搬入ルートも確保した。
レシピも考え直して、複数回作っては改良した。
でも、これで「おいしいカレーにたどり着けるわけ」ではありません。
最後に一番重要なことがあります。
「誰が作るか?」
ですよね。
料理したことないバイトの子が、レシピ見て正しく調理できますか?
提供時間なども考えて、カレーを提供できますか?
最近では、衛生管理面など注意することは調理する以外にもたくさんあります。
それはレシピには乗っていないかもしれません、特に当たり前すぎることはマニュアルなどには書かれていないこともあります・・。
家も一緒です、造るのは職人です。
家づくりに携わるすべての人間がプロとして情熱を持ち、いい家を造ろうという想いで組織されている集団こそが、いい工務店というわけです。
職人(作り手)で重要なのは「モラル」と「スキル」です。
経験値ではありません。(もちろん、経験値もスキルと関係する重要なファクターではあります)
特に、モラルはその人自身の性格や仕事に対する情熱が源泉になります。
どんな人が建てるんだろう?気になりますよね?
いえ、もっと気にしてください(笑)
どんな人なのか?
どのくらいのキャリアがあるのか?
大工(であれば)は、なぜ大工になったのか?
今のやりがいは?
現場で気を付けていることは?
この業界、自分の家をオーダーした時点では、「誰が作るかわからない」ケースが多いです。びっくりですよね・・
本当は契約前に直接大工さんと話しをするのがベストなんですが、なかなかそうもいかないこともあります。なので、少なくとも、住宅会社からきちんと説明を受けるのはマストです。
複数回にわたって「カレー」を例に家づくりの初歩を書いてきました。
知らなかった!という方もいれば
そんなの当たり前じゃん!!という方もいるでしょう
でも、様々な住宅会社を調べれば調べるほど
住宅会社とコンタクトを取り、打合せをすればするほど
自分で勉強すればするほど
忘れたり、迷ってしまうことでもあります。
事実、過去にも今もそういう迷子をたくさん見てきました。
あなたの食べたいカレーは、どんなカレーですか?
単なるカレー?(単なる家?)
おいしいカレー?(いい家?)
使っている材料にこだわったカレー?(材料検討が十分になされた仕様の家?)
正しいレシピ通りに作ったカレー?(正しい設計図書、施工マニュアルに従って作った家?)
きちんとオーダーをしないと、突拍子もないカレーを食べる羽目になるかもしれません。
ここに・・工務店の選定をする際に気を付けて頂きたいことをまとめておきます。
HPをご覧になる際に、少しでも参考になれば。
(絶対ではありません。個人的な経験則から書いていますので、ご注意ください)
□会社の社歴
長ければいいわけではないですが、その前は何をやっていたか?変遷は?なども参考になります。社歴10年以上(もっと言えば15年くらい)がいいですね。理由としては、
住宅会社は10年でいったん家の保証をきる会社が多いです。瑕疵保険なども10年を区切りにしていますので、真の実力は創業10年を超してからわかることになります。
※10年超えた際のアフターやトラブル対応で、会社から費用出費が多く会社運営がうまくいかないケースもみてきました。
□社長の顔
HPに社長の顔が出ていないところは微妙ですね。代わりに「住宅部門代表」とか掲載されているとこもありますが、それでも心もとない印象です。そもそも「自分の考える家づくりが最高だ」という社長が多く、顔出ししない理由はあまり考えられません。
□各種SNSをやっているか?
FB、ブログ、ツイッター、インスタ等をやっているか?などをざっと見ましょう。
その上で、社長や社員の顔や情報があまり出てこないのは微妙ですね。また、住宅に対する考え方や信念が感じ取れないのも危険です。部材の紹介やイベント告知のみではなく、会社理念が伝わる・家づくりのポリシーがわかるようなものであればいいですね。なお、更新頻度が少ないのは論外です。
□OB客とのイベントを積極的にやっているか?発信をしているか?
HP上で単に「OB会がある」ということではなく、実際にイベント開催の模様などSNSでわかるか?も重要な判断材料です。これまでのOB客を大切にしているか?が伝わってくれば問題が少ないでしょう。
□資格関係
建設業の許可番号(番号が古くないか?も)、有資格者の人数なども確認しておきましょう。
□会社案内、業務内容
なぜ注文住宅をやっているのか?何が得意か?が伝わらない工務店は微妙という感じがします。
特に「なんでもできる」というフレーズや「安い」と言ったワードを使用すると会社は避けたほうが無難ですね。あいまいなアッパー表現「高級」「ハイグレード」を目にすることもありますがそういったフレーズもぱっと見はいいのですが、結局どんな家づくりをしているのか?よくわからないというのが本音です。
□団体や雑誌掲載など
●●団体所属・・・などは参考程度の情報です。どこかに所属しているから優秀というわけではありません。また▲▲▲という雑誌に掲載された!というのも、原則自分で掲載費用を払って掲載していますから、これもあてにはなりませんね。
□過去の建築実例
あまりにテイストがバラバラだったりすると、「なんでもできる」をうたい文句にしている会社の可能性が高いですね。また、過去には、雑誌の切り抜きやどこからか勝手に引用した実例、仲間内の写真を借りるなどの飛んでもないケースもありました。
□家づくりの信念が各所からわかってくるか?(最も大切)
例えば、社長は喘息もちで自然素材の家・・というのがその会社の信念だとします。
では、自然素材って何か?とか、アレルギーの説明とかに全く触れていない会社はNGです。また、選択している(標準)工法や材料が自然素材と離れているのもNGで、要は「売りやすいものを採用している」ということがわかってしまいます。
現在、中小企業でも大手と同じような集客活動ができるようになりました。一番の原因はネットですね。一昔前は、何をやっているかわからない・・という工務店だったのが、情報発信をして自社のアピールを広範囲にできるようになりました。
事実、うまくHPを活用して受注につなげよう!という法人セミナーや工務店コンサルもたくさんいます。
大事なのは、自分が「その商品(仕様)」を受け入れることができるか?がまず大切です。
その商品を気に入るかどうか・購入決定の決め手には、性能・値段以外にも重要なことがあると少しでもわかって頂ければ幸いです。
今後、何十年にもわたって自分たち家族を守り抜く力を持った家なのか?
家を建てたい!と思う皆さんは、最低限「自分たちが住む家」の正確な情報を得て、納得した上で住宅会社と契約をしてください。
失敗のない家づくりを祈念しています。